どうもです~
更新が滞ってしまいました。。
秋ムードが漂ってまいりましたね。
小雨が降るごとに、蟲の鳴き声が移り変わっていきます。
毎年この時期になると、昔の男を思い出します。
大阪で働いていたころの夏、懇ろな男がおりました。
いつもさみしい笑顔で優しく笑う、犬のような男でした。
彼は覚醒剤中毒者で、密売にも手を染めていました。
加賀に対して使用を迫ることはなかったのですが、
彼はもう覚醒剤なしでは生きられない身体になっていました。
そして同じように、精神も。
夏の幻は終わり、彼は逮捕されます。
何年かは忘れましたが実刑判決を受け、刑務所に収監されました。
通常は親族以外の面会はできないのですが、
加賀が彼の寝食の面倒をみていたので、特例的?に面会することができました。
くだらない日常の話などをして毎回終わっていたのですが、
数回目の面会の日、彼は突然泣きじゃくりながらこう言いました。
「俺に会いにきてくれるの、お前だけだ」
あんなに交友関係の広かった彼が、家族ともうまくいっていた彼が、
仕事でも人望の厚かった彼が、浮気だって何回もするくらい色男だった彼が、
生まれて初めてであろう孤独を知って、慟哭していたのです。
加賀も驚きました。
家族くらいは来ているだろうと思っていたし、他人だって完全に面会禁止なわけじゃないし、
手紙や差入れだってあってもおかしくないはずなのに。
彼の涙を初めて見ました。
優しい目によく似合う、温かい涙でした。
人の情って、儚いものですね。
まるで秋の空模様みたいに。
彼はもうすぐ出所だそうです。
迎えにいってあげようかな。
それとも、彼はもう、加賀のことなんて忘れてるかな。
手紙を出しても返ってこないから。
あの日のくだらない話、楽しかったな。
彼も、同じことを考えてくれていたらいいな。
ではでは~
劇終